› 左官屋の嫁はん日録 › 2014年06月18日

 

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Posted by あしたさぬき.JP at

2014年06月18日

久住有生さんにお会いしました。

お久しぶりです。
左官業界のみならず建築業界、多くのメディアにも出演し、国内外でも活躍されている久住有生(くすみ なおき)さんにお会いする機会に恵まれました。
わたしの主人が身を置く“左官”という業界には著名で活躍されている左官職人の方は何人もおいでますが、そのなかでも久住さんはごく一般的にも露出が高いのではないでしょうか。
情熱大陸、ソロモン流…「あ、それ観たことあるかも」そんな記憶がある方もいるのでは。
建築系の雑誌をながめていると、お名前を見かけることも度々です。
そんな久住さんが先日、坂出市内のギャラリー(建設中)を手がけるとのことで見学に行って参りました。講演もありましたので少し長いですが、まとめてみます。

「普段は現場で作業してるときに見学に来られるんですけど、こういう形でやるのは初めてなんで…気持ちが入らないのでやり難いですね(笑」

以下はデモンストレーション中の久住さんのお話。

「僕は必ずウチの職人たちと現場に入って全部の仕事をしています。
世界中からお仕事を頂くんですけど、ひとつひとつしか作れなくて最初から最後まで毎日現場に入って作業をしています。
(今回使用している材料)土とかワラとか砂、全部香川県のものです。
何層にも土を塗り重ねて半乾きの状態から削ります。そうするとこういう形をつくることができます。
このデザインは地層のように見えるかもしれませんが、僕のイメージとしては柔らかい石。
たとえば砂岩が水や風で削られたような意匠になるものが綺麗だなと。
そういうものを人工的に作れたらな、と思ってます。


なぜ僕が自然素材が好きかというと人間が物づくりをする時点で全てが作為的になるんです。
自然なものといっても結局は “物をつくろう” という欲のもとに成り立っていると思うんです。
それを和らげてくれるのが僕はこの“土”だと思うので。
エゴで作ってるかもしれないけども、自然の良さは土が勝手に表現してくれるので僕の力じゃなくて材料の力で何とか人に良く見てもらえてる。(材料に)見せてもらえてるというか…
そういうふうにして物を作ってます。

例えばこの壁なんかも自然光が正面から当たると分かりにくいデザインなんですが、照明を当ててもらうと光と影。その陰影が強調されて独特の表情になると思ってます。

それで今回の現場で一番嬉しかったのは地元の(左官)職人さんが、けっこう毎日来て下さるんです。
色んな地方で仕事してるんですけど“一緒にやりましょう”と言ってもなかなかやってくれないんですけど、香川の人は熱心なのか、何なのか…(会場一同笑)
みなさん声を掛けると一緒に手伝ってくれます。
でも僕にとってはそれが一番の目的というか…嬉しいことです。僕はものを作ってて疑問に思うこともやっぱりあって。
たとえば僕らがその土地に無かった新しいものを持って行くと、その土地の永い年月をかけて作られてきた文化とか意匠を変えてしまうんじゃないかっていう恐れもあったり。
戦後、高度経済成長があって、もの凄いスピードで変わっていって便利にはなったけど継承されずに変わっていった。
だからモノとかカタチとかが力を持たなくなった、感動しにくくなったというか。
特に僕、いま東京に住んでるんですけど東京の建築を色いろ見に行っても新しいものって凄い予算かけててもなかなか感動するものが無かったり。
例えば子供が興味を持ってそういう(職人の)仕事に就きたいなと思うような、田舎では自然にあったようなことが減ってきたり無くなってきている。
情報が多かったり新しいことが増えると良いものが無くなる。そういう状況のなかで生活しているんだなと考えることもあります。

でも良いものって昔は勝手に残ってきたんですよ。
僕はもともと淡路島出身で二十代半ばまで普通の住宅の仕事をしてました。そのころは腕が良かったらどんどん仕事を頼んでくれるので未だに営業なんてしたことがないんですけども…
腕さえ良ければ仕事はあったんですが、今は良いものが減ったのでお客さんがそれを知らなくなったというか。僕の所にも全国から腕の良い職人さんが集まってくれるんですけど仕事が無かったり。それはやはり危機的な状況で。
どこの県、町へ行っても同じような景色があったり。外国からお客さんが来ても、どこを見せればいいんだろう、と。昔は淡路島の普通の農家に行くだけでもみんな喜んでくれた。
今では、どこの家も新建材を使って似たようなものになって感動できるもの、人に伝えたいものが減ってきているように思います。

僕の仕事で最近よく頼まれるのは昔からある伝統的な仕事よりも見栄えがするというかパッと見、
印象に残りやすい壁の依頼が多いです。
それでも左官や壁に興味を持ってもらえると嬉しいし、僕らも伝えていく必要もあるし。
日本の職人ってすごく勤勉で真面目に物づくりに取り組んでるんですけど、唯一僕ら( 左官職人 )が怠ったことは、人に提供すること。
プレゼンテーション、ブランディングしてこなかったことが今の現状を招いていると思います。

左官の仕事って、ただ平面を塗るだけじゃなくて三次元の形なんか得意とする分野で可能性はいくらでもあるんですけど、なかなかそういう風には使われないというか依頼されない。
でも、依頼されないからって “仕事がない” っていうのもおかしな話で…
僕はもともと色んな仕事の依頼が来てたわけじゃなくて田舎でずっと普通の住宅をやってたんですね。
淡路島はだいたい家を建てるのに2,3年かける人も沢山いたんで良い仕事はさせてもらってました。
それでも竹を編んで、土を塗って1,2年もかかるような左官工事も最後はメーカーで売ってる新建材を塗ってくれって言われるんです。
けどそれは左官がちゃんと伝えてこなかったからそうなったんだろうなと。その頃から“ なんかおか しいな” と思うようになって。
二十歳くらいの頃は土壁よりクロスのほうが良いとか言われてたんですけど、クロスのお金で良いから漆喰の彫刻をやらせて欲しいとかお願いしたり。
当時はずっと職人たちと毎日まいにちホント20時間くらい働いてましたね。
そんな風にやってる内に色んなところから声がかかるようになって今では海外からもオファーしてもらってます。

そこにいるから何も出来ないということはないと思うんですけど、土に限って言えばその土地にしかないものを使えるので海外に行ったら海外にしか出来ないことも出来ると思います。
そういう風に何でもやろうと思えば、けっこう何でも出来るのかな、と思います。」













  


Posted by 嫁はん at 11:08Comments(0)左官あれこれ