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2014年06月27日

久住有生さんの現場にて。

講演での久住さん
「…香川の人は熱心なのか、なんなのか…(笑)
みなさん声を掛けると一緒に手伝ってくれます。」


本当に、なんなのでしょう。
それでも「一緒にやりましょう」どうぞ、と声をかけられたのなら遠慮をしていても仕方ありません。
たったこの、今を逃すと次はいつになるかなんて分からない。
もしかするとこれっきり無いのかもしれないですから。



さて翌日。
勇んで現場にかけつけたものの、主人はいきなり久住さんとお弟子さんに無言で挟まれている。
久住有生さんの現場にて。
「うわあ、これは色いろとタイヘンなことだ」
素人の率直な感想というものはそんなものかもしれないけれど、ようするに主人にとってはプレッシャーが凄かったであろうと。

製作過程をのぞけるという貴重な体験とはいえ、目にするなり入り口で引き返しそうになりました。
けれども、それではいけないのだと足を踏み入れる。
現場の張りつめた空気をなぎ倒すようにして前に出した右足の感覚を、ありありと思い出します。
最初の一歩というのはとても重たいもの。
左官仕事の雰囲気には慣れているつもりでも、場と人が変われば全く違うのは当然ですよね。
当のわたしは見ていることしかできないのですが。
久住有生さんの現場にて。
技法でいうと“掻き落とし”でしょうか。引っ掻いて土を落とすので、掻き落とし。
ワイヤー製ブラシでの掻き落としは見たことがありますが、鏝では初見。ブラシより難しいのは一目瞭然です。

厚みのある壁ですが、いきなりぶ厚く土を塗ると崩れてしまうので“層”になるように土を塗っています。
あるていど乾かしてはまた土を塗り、乾かしては土を塗る、を繰り返し壁の厚みを作っているそうです。
半乾きの状態に久住さんがデザインを入れ、その線と線とのあいだをひたすら鏝で湾曲に削ると いう気の遠くなるような作業。
湾曲に削ることで生じる鋭角のところ。ここを欠けさせてしまわないようにするのも大変なのでは。
また削れば出てくる“層”が目立たないよう、ちから加減にも気をつかいます。
久住有生さんの現場にて。


「人の現場だし…って遠慮することもあるかもしれないけど、それも勉強になるし」
など技術的なこと以外のアドバイスも。
久住有生さんの現場にて。


単調な作業は時間を追うごとに一点に集中しがちになります。
「あー、ワケが分からんようになってきた」目をちかちかさせながら思わず叫びが。
久住有生さんの現場にて。
どうしてもそうなるから、そういうときはいったん離れて全体のバランスを見て。
(広くて大勢で取りかかる現場だから)自分だけの腕さえ良ければいいんじゃなくて、 他の人はどういう風にやってるか。
自分がやりたいようにやるんじゃなくて他の人との息を合わせることも必要、と。

久住有生さんの現場にて。
一日で仕上げることのできる面積は限られています。

その限られた面積どうしが少しずつ繋がってやっと雄大な土の表情が出てくる。

左官の世界では、すぐれた職人と材料さまざまな技術が集結しているからといって、 仕上がるスピードが格段に上がるわけで もないようです。





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