› 左官屋の嫁はん日録 › 2014年09月26日

 

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Posted by あしたさぬき.JP at

2014年09月26日

身近なところに左官の技術。

お久しぶりです。さて、こちらの画像。
香川の中讃近郊にお住まいの方や、通勤通学の縁でご存知の方はたくさんおいでるのでは。

そうです。
ここでわざわざ説明するほどでもないことは重々承知ですが、MIMOCA『猪熊弦一郎現代美術館』です。
『創造の広場』という作品の巨大壁画ですが、左隅の入り口が大きさの比較になりそうです。


この壁画を見るたび完成から二十年以上も経つのに作品の色が褪せてない(黒い線のところ)なと感じていました。
面積がすごいというのも合わせて一体何を使ってこの“黒い線”を表現してるんだろうかと近寄ってみると。


このなかに左官の技術をみつけましたよ。



もう少し近づいてみましょう。よく見てください。



なにかがたくさん詰まっているのがわかります。
「あ、こういうの、色違いで見たことあるかも」
と思われた方もいるかもしれません。

こちら、れっきとした左官技術のひとつで『人造研ぎ出し仕上げ』日本左官業組合連合会HP引用です。
香川県では「研ぎ出し(とぎだし)」や「人研ぎ(じんとぎ)」と略して呼ばれることが多いです。

とても大まかですが、セメントに数mmほどの好みや用途に合わせた色の石を混ぜたものを塗り、 表面が乾いたら専用の機械で研磨する。
削られた石つぶの断面を見せる左官技術のひとつです。
耐久性が高く、カタチや使える場所にも応用が利きやすいので、古い公共の建物などによく使われています。
個人的には学校の手洗い場やトイレの間仕切りに使用されてるイメージが強いです。
この壁画は黒色ですが、クリーム色や淡いピンクのようなのが目立ちますね。

いちど高松市内の古いお店のお手洗いにクリーム色の人造研ぎ出しを見かけました。
洗面台には真鍮の蛇口を使っていて、照明の色がオレンジだったのが古めかしいけれど上品さがあり、強く印象にのこっています。
現在ではこの『人造研ぎ出し仕上げ』手間がかかりすぎるのと、代用品がたくさん出来たため、施工されることが少なくなっているようです。
また小さな面積でも見直されることがあるといいのにな、と感じる技術のひとつです。


“左官”でも大きく『野丁場(のちょうば)』と『町家(まちや)』に分かれます。
野丁場は大規模な現場に入ることが多いので、 きっとこの壁画の工事にたずさわったのは野丁場の左官職人さんたちでしょう。
町家の左官は個人の住宅に関わることが多いです。扱う材料や得意分野に違いがあったりします。

それにしてもこの巨大壁画、ベースになる白い石に溝を掘ってから行われたんでしょうか。
もし身近なところで『人造研ぎ出し仕上げ』を見かけることがあれば「これも左官の仕事なのかぁ」とぼんやり思い出して頂けると幸いです。



  


Posted by 嫁はん at 13:40Comments(0)左官あれこれ